来るものことごとし、去るものもまたことごとし。

 昨年末から我が家のPC環境は大きな変化を遂げている。
 皮切りは昨年末の一大イベント、コミケであった。いまもってまったく話題になっていないが、わが亀電は体験版とはいえ同人ゲームを制作出品したのである。亀電歌舞音曲制作室主任たる私は、この制作を機に録音環境の向上を目的としてオーディオキャプチャーを購入したのであった。この新機材導入によって、亀電制作のゲームサウンドは劇的ともいえる音質向上がなったわけだが、あいかわらずいまもって話題になっていない。
 続いて年明け早々OSの再インストールの必要に迫られ、どうせならといままでのからWINDOWS XPに乗り換える。ちなみにService Pack2である。重い。お節介にもほどがある。ほっといてくれ。
 とどめに先月、モニタ瀕死。画面上方に著しいにじみ。さらに全体にわたっての激しいぶれ。御臨終あそばされる日も近いとみて思いきって新しいモニタを購入。CRTから液晶へ。薄いのはいいんだけど、きめの細やかやではやっぱりCRTにはかなわないなあ。ちなみに以前の17インチから19インチにサイズアップ。目を開けばそこには新しい世界が。
 とまあ、こんなところでパソコンまわりのマイナーチェンジも終了かしらんと思っていたら、先日、使用中になんの前触れもなく突然画面が灰色の斜線に埋め尽くされ、その後ブラックアウト。WINDOWS98時代からPCを常用しはじめて早6年、現在までに愛機も代替わりを三回重ね、ケアレスミスによる誤動作、HDDの経年劣化によるデータ損失、ウイルス感染による挙動不審、その他原因のはっきりしない大小の不良動作を経験し、たいていのことには動じなくなったと自負していたが、見た目の異様さも手伝ってさすがにこれには驚きあわてふためく。
 再起動をかけようにもモニタになにも映しだれていない状態では終了ログも確認のしようがないので、しかたなく電源ボタンを直接押してオフにする。作業中のデータはこれでおしゃか。一生に一度書けるか書けないかっていうくらい神懸かった面白い文章を書いていたんだけど、お見せすることができなくなってしまった。残念。
 電源を再度入れるもあいかわらず変化なし。PC本体の冷却ファンの音はするので、少なくとも電源は入っていることを確認。ならば購入したばかりの液晶モニタが原因なのではないかと推測し、先日御臨終召され、安楽の地夢の島への埋葬を待つばかりとなっていた先代CRTモニタをとこしえの眠りから叩き起こし、今一度狂乱にまみれた現世に復帰させんと召還させるも、結果は同じ、画面はまっ黒なまま。しかし、現役引退当時、このモニタはかなり映りが悪くなっていたとはいえ少なくともなにがしかの映像は映しだしていたので、二台のモニタで同じ結果になるということはやはり原因はあくまでPC本体側にあるということになる。念のためもう一度電源を入れると、一瞬だが画面上に「VIDEO NO SIGNAL」というメッセージが表示されることを確認する。なるほど、すべての大元たる受信すべきビデオ信号が発信されていないんじゃ映るわけはないのだ。原因がわかってひと安心である。
 なんてほっとひと息ついている場合ではなく、問題は対処法だ。本体のグラフィックまわりだなんてどういじればいいのかさっぱりわからん。ビデオ信号そのものが発信されていないってことは内部で機械そのものが破損してる可能性が高いってわけで、その場合マザーボードを修理に出すしかなく、修理なんかに出すくらいならマザー全とっかえした方が早いんじゃないだろうか。マザーボード交換ということは、すなわちそっくり新しくパソコンを新調するということで、すわ、マイナーチェンジだなんて乙に浸っているどころではなく、フルモデルチェンジである。勘弁してくれ、いまパソコン新調したってたいしたメリットはないのだ。せめて年末年始まで保ってくれれば64bitCPUのvistaであきらめもつくのに。ああ、また借金が増える、思えば生まれてこの方いいことなんかなにひとつなかった、女にもてたことはないし、懐があったかかったこともないし、最近はげてきた気がするし。
 とめどなく落ちこみかけたとき、はたと思いつく。そういや、グラフィックカードなんてものを装備していたのだった。そもそも現在のパソコンはたけしがPC版『りんね天翔』を制作していた際に、それまで私が使用していたパソコンではスペック上DirectX9が動作しないといわれて買いかえたもので、どうせゲーム目的で機種を選ぶんならさらに上を目指してグラフィックカードを別に購入してはいかがとの意見を受け入れて当時先端であったnVIDEIA製GeForce4グラフィックカードを別途導入したのであった。いまをさかのぼること2003年に購入してから三年間、一度としてその性能を意識したことはなかったが、こうなってくると俄然その存在が意味を増してくるのである。
 モニタのコードをPC本体からはずしたのちサイドパネルを開いてまずはグラフィックカードの取り外し。続いてオンボードのモニタコネクトにコードを接続。最後に神頼みするような心持ちで電源ボタンを押す。
 このときほどWINDOWS XPのロゴが懐かしく思えたことはありませんでした。