吹けよ風、呼べよ嵐。

 午前中から雨が降ったりやんだりの気が滅入る空模様だったが、午後にいたるや木々も折れよと強烈に吹きつける風がそこに加わる。じとじとと降る雨だけならば憂鬱極まりないが、渺々と吹きすさぶ風にはなにやら男の悲愴感を演出する効果がある。
 夜、もはや傘など役に立たないほどの嵐のなかで、友人とふたり頭を押さえて「ヅ○がっ、ヅ○が飛ぶぅ!」とふざけあっていたら、となりで同じように頭を押さえていたおっさんから非常に悲しそうな目でにらまれてしまった。
 風貌に比べるとあまりにも黒々と繁った頭髪、吹きつける風にもかかわらず乱れない髪型、ちょっとずれていたような気もする。ひょっとしたら本当に○ラだったのかもしれない。
 なんだかとってもすまない気持ちになる。強く生きていって欲しいと願うばかりである。