新しい革袋に古い酒を


 夏のコミケが終わって、さあゲームだと喜び勇んではじめた『メタルギア ソリッド 4』。ゆっくりのんびり遊んできたが、さすがに連続して五周目ともなると疲れてくる。飽きたわけではないんだけど、反射神経と繊細な指使いを必要とするだけにプレイ中は緊張しっぱなしなのだ。なにより下手くそだからやりなおしてばっかりだし。
 んで、ちょっと息抜きにRPGでもやってちまちまとレベル上げ作業を楽しみたいと思い、購入したのがスクエニの『ゼノギアス』。発売がいまからちょうど10年まえの98年。まだエニックスと合併する以前のスクウェア謹製RPGである。聞くところによると、PS1時代のRPGでは名作らしい。
 話はちょっと横道にそれるが、日本のRPGといえばエニックスドラクエシリーズスクウェアのFFシリーズが両巨頭というのは衆目の一致するところ。にもかかわらず、私は両方ともやったことがないんである。正確にいうと、ドラクエは小学生時分に3を途中までやって放り出し、FFにいたっては手を触れたことすらない。
 ファミコンスーファミプレイステーションという陽のあたるエリートコースを歩んできたゲーマーならば通過儀礼として当然のようにプレイしているのだろうが、出だしこそファミコンなれど、その後はPCエンジンを経由してメガドラセガサターンプロレタリアート的な職人ゲーマーコースを歩んできた私にとっては、RPGといえば「天外魔境」であり「ファンタシースター」だったのである。熱狂的セガ信者からするとドラクエは欲しがりません勝つまではという垂涎のアイテムであり、FFだなどと口にすればすぐさま贅沢は敵だ! と非難されてしまう、当時はそんな時代だったのだ。
 そんな私が唯一クリアまでプレイしたスクウェアRPGが『クロノ・トリガー』である。97年にプレイステーションで『FF7』が発売され、同時に『ドラクエ7』もプレステでの発売が発表されたとき、さすがにもう無理だろと、ひっそりとスーファミを買った。そのときに本体と同時に購入し、寝る間も惜しんでクリアした。それまでPCエンジンメガドラで遊んできた、力が入りすぎててんこ盛りによそったあげくゲップが出そうなほどごてごてとしたものや、そうかと思うと気が抜けた炭酸飲料のようなスカスカのRPGとはまったく違う、イベントのたびにアニメシーンも入らず、やたら広大なダンジョンもないのにしっかりと冒険の歯ごたえがある洗練されたスマートなRPGだった。これがスクウェアなのかと妙に納得してしまった記憶がある。
 ちなみに、翌98年は湯川専務のテレビCMを見てセガはもうダメだと思い、また一人暮らしをはじめた当初はテレビがなかったこともあってゲームそのものから離れることとなった。だから当然、『ゼノギアス』なんてゲームは知らなかったし、このゲームが開発当初はクロノ・トリガー2として企画されていたなんて事情も知らない。知っていたとしても、すわと飛びついたかどうかは疑問だ。当時はゲームだなんて状況ではなかった。私が再びゲーム機を購入したのは『鬼武者2』の松田優作目当てでPS2を入手した03年。実に五年後のことになる。
 それにしても、つくづく隔世の感がある。子どもの頃はやりたいゲームは発売日まえから雑誌でチェックして、なけなしの小遣いを握りしめてゲームショップまで走って買いにいったのが、いまやゲーム機本体をインターネットに繋いでおけば、PlayStationStoreだなんて専用のオンラインストアから当時とまったく同じゲームソフトを小銭程度の金額でダウンロード購入できる。データ販売だから遊ぶときもディスクは必要ないときた。電源入れてアイコン選べばすぐに遊べるんである。便利な時代になったもんだ。それに、新しいゲーム機を手に入れるとついつい新しいゲームにばかり目がいってしまうが、こういうかたちならば古いゲームも気軽に新鮮な気分で楽しむことができる。ゲームショップの店頭で、いまさらPS1のゲーム買おうとはまず思わない。『ゼノギアス』だって、こういう仕組みがなければ、まずやる機会がなかっただろう。おかげさまで、古き良きRPGにどっぷり浸っている。
 目下の誤算はただひとつ。このゲーム、いったいクリアまでに何時間かかるんでしょうか。二枚組のディスク構成で、現在のプレイ時間が60時間。いまだ一枚目なんだけど、ストーリーにはまだまだ波乱がありそうです。
 そろそろ『メタルギア ソリッド 4』も先を進めたいんですが。