おれのアトリエ


 PS3の『ロロナのアトリエ』、やっとのことでプラチナトロフィーをゲット。おつかれさまでしたと自分自身をねぎらってあげたい。おめでとう、私。ありがとう、私。
 トロフィーリストを確認してみると、ゲーム開始直後に取得できるトロフィー「ロロナのアトリエ」を取ったのが8月10日。夏まっさかりである。思い出した。折良く友人のたけしが遊びに来ていたので、アトリエシリーズの基本的な遊び方をレクチャーしてもらおうと、一緒になってPS3の電源を入れたのだ。あのときは、お互いにまだTシャツ姿だった。ゲーム開始当初、なにをやればいいのかさっぱりわからずに右往左往している私の様を見て、すでに熟練アトリエ経営者だったたけしがニヤニヤしていたのを昨日のことのように思い出す。
 ひとつ疑問なのは、その場に賢治(うまづら)がいたのかどうか思い出せないことだ。こいつは初代プレステで発売されたシリーズ第一作『マリーのアトリエ』からハマった筋金入りのアトリエファンで、この十年、なにかというとアトリエやれやれと私に勧めてきたのである。十年言われ続けて、とうとうロロナ買ったよと伝えたときも、野生の悍馬に戻ったかのように興奮していたので、初回プレイ時にはまちがいなくその場に立ち会っていたと思うのだが、いまいち記憶が曖昧だ。いたと言われればそうかと思うし、いなかったと言われればふーんって感じ。
 というのも、こいつ、とにかく役に立たないのである。プレイ中、折に触れてはゲームの進め方についてたけしと賢治に助言を求めてきたが、先を見通して的確なアドバイスをしてくれるたけしに比べて、賢治に聞くとその場その場であれをやってみろ、これをこうしてみろと勝手にゲームを進められて、しまいにはにっちもさっちもいかなくなり、結局、進めたぶんをぜんぶやり直すハメになるのである。
 考えてみれば、モンスターハンターも賢治の熱烈な推薦があってはじめたのだが、いざ遊んでみると賢治は肉ばっか焼いていて、モンスターを倒すのにはまったく役に立たなかったなんていう前科があった。おまえ、よくそれで人にゲーム買わせられるよな。
 それにしても、うだるような暑さのなかではじめたはずが、いまやコートを羽織らなければならないほど寒い日もある11月である。基本的に週末しかゲームをしないため、ひとつのゲームを遊び尽くそうと思うとどうしても三ヶ月ほどかかってしまう。今年のはじめに遊んだ『戦場のヴァルキュリア』も三ヶ月かかったし、次にやったアクションゲームの『アンチャーテッド』ですら二ヶ月かかった。毎月新しいゲームを購入し、週単位でクリアしてるたけしを見ていると、驚きも心配も通り越して、次元が違うとただただ感心するばかりである。おかげでゲーム進行に詰まったと泣きついても、打てば響くように答えがかえってくる。へたれゲーマーが持つべき友はゲーム廃人だ。
 『ロロナのアトリエ』の私のプレイは、まさしくそんなたけしのゲーム進行をなぞったもので、トータルのプレイ時間もほぼ同じ。のんびり進めたぶん、こちらが若干多くて、120時間くらいだろうか。「人生の120時間。そのとき彼になにが!」と書くと悲壮な雰囲気が漂うが、「プレイ時間120時間。食って寝てあとは遊んだ!」と書くとほほえましくてよい。
 アトリエシリーズ初心者ということもあって、1周目はなにも考えずに出題された王国依頼をこなしつつ、街の評価を上げるためのフロントクエスト、ショップおよびキャラクターの友好値をあげるためのフレンドクエストを受けまくるプレイをしたのだが、いやそのめまぐるしいこと。練金調合に必要な素材を集めるために採取の旅に出て、やっとそろって街に帰ってきたと思えば、他のクエストの〆切が目前に迫っている。そんなことを何度か繰り返しているうちに、王国依頼の〆切が近づいてきて、ヘタをすれば採取にも出かけられなくなってしまう。
 クエストを受けては期日に間に合わなくてキャンセルというプレイを三年目まで続けたあげくに、とうとう王国依頼をすっぽかしてゲームオーバーを迎え、どうにもならんと涙目になったところで、やっとこのゲームの効率のよい進め方に思いいたる。街の人気とキャラクターの友好値を両方同時に上げようとするから、期日がダンゴのように繋がってしまう。まさしく、仕事の請負過ぎによる典型的な〆切スパイラルである。
 実際、たけしに聞いてみても、キャラクターごとのエンディングに到達するためには特定のイベントを起こさなければいけないのだけれど、そのイベントを見るのに必要最低限まで友好値を上げたら、しばらくは放置して次のキャラクター。その合間に街の評価を上げるフロントクエストというプレイスタイルだったそうだ。さらに言えば、そうやってプレイしても三年目の後半にはとくにやることもなくなるということであった。
 ほんとかよ、となかば疑いつつ2周目をやってみたのだが、結果、1周目のことがバカバカしく思えるくらいスムーズにゲームが進んでいく。正直、最初のプレイは忙しすぎてとてもじゃないが楽しむなんて余裕はなかったものが、2周目になると俄然このゲームが面白く感じてくるんだから都合のいいものだ。
 2周目もクリアしたいまだからこそわかるが、一年目から友好値、街の評価をガンガン上げようとしたことが失敗の要因であった。そもそも、クエストを受けるといっても、クエストごとに難易度が設定されていて、難しいクエストほど達成すると数値が大きく上昇する。一年目では、難易度が最低ランクのクエストしか出題されないため、いくらこなしたところでパラメータの上がり具合なんてたかがしれているのだ。一年目はまんべんなく、ある程度まで。二年目は街の評価はあまり気にせずにキャラクターに専念。三年目でイベントフラグの回収を済ませながら、一気に街の評価を上げる。さらに余裕を持たせたいなら、エンディングのイベントフラグも特に期限の決まっていないクーデリア、イクセルのふたりは三年目から狙ってもじゅうぶんにまにあうので二年目は友好値を気にしなくてもかまわない。
 それと最後に思い出した。2周目では1周目で稼いだお金が持ち越されるので、クエストの達成が非常に楽なんである。むしろ、1周目では採取と調合に追われて大量のクエストをこなすのは不可能なんじゃないだろうか。その意味でも、このゲームは2周目からが本番といっても過言ではないのだ。
 夏から秋をまたいで冬になるまで楽しませてくれた『ロロナのアトリエ』も、とうとうプラチナトロフィーを取るまでに遊び尽くしてしまった。『アンチャーテッド』に続いて二本目である。もはやどれが仕様でどれが不具合なんだからわからないほどのバグの嵐にも慣れた。本体にリセットかかる瞬間が予想つくほどにもなった。予定していると言いつつも一向に配信される気配のないダウンロードコンテンツは、もう諦めた方がいいのかもしれない。『アルトネリコ』でてんやわんやなんだろうし。
 だができることなら、まちがいなくこのゲームの魅力となっている、多彩なイベントの閲覧モードが欲しい。PCのエロゲならデフォルトでついてる機能だし、最近ならちょっと気の利いたギャルゲにもついている(同じようにしょうもないバグ出した『アマガミ』とか)。さらに希望を言わせてもらえれば、もうちょっと手の込んだ練金術がやりたい。大量の素材と何段階も手順を踏んでやっと調合完成するようなクエストがあってもいい。
 しかし、真に個人的な要望を出すならば、アストリッドの追加シナリオがやりたいのだ。切れるような眼差しと氷点下の声音で思いっきり罵倒されるようなやつをお願いしたいのであります。
 ソフトもう一本買うから!
 『アルトネリコ』も1から3までセットで注文するから!
 お願い、ガストさん。