光あれ。


 今年はクリスマスに前向きに対処したいと、今月に入ってから昨日まで柄にもなく、また愚にもつかないことをわめき散らしてきたが、どういうわけか、私の身辺には一切の変化の起きないまま、聖夜本番を迎えた。まったくもって理解に苦しむと言わざるをえない。血を吐く思いですごしてきたこの24日間はいったいなんだったのか。
 あと10センチはほしいと願っていたにもかかわらず、身長、おもに股下が伸びることもなかったし、もしゃもしゃとからまる天然パーマがさらさらストレートヘアーに変化することもなかった。郵便ポストのなかに札束がころがっていることもなければ、通勤電車で座席をゆずってもらうこともなく、しかも、あろうことかなぜかまえに座っていた女性から舌打ちされるしまつであった。なんだ、加齢臭でも発しているというのか?
 どう考えても納得がいかないのは、「曲がり角を曲がったとたん、女性とぶつかり運命的な出会いを果たす」がなかったことだ。さすがにこれくらいは起こるにちがいないと確信していただけに、理不尽さに腹がたってしょうがない。神様、おれのことキライなの?
 そもそも、サンタクロースは子供に夢を与える存在だなんていうけれど、子供はわざわざ与えてやらなくとも夢を持ってるではないか。奪っても奪っても夢を抱きつづける。それが子供ってもんだろうが。そんなことよりも社会の荒波に溺れて夢を抱けなくなった大人にこそ夢を与えるべきだ。あの赤いおっさんはそこんところがわかってない。根本的に勘ちがいしている。もうサンタなんか信じるもんか!
 街を歩けば右も左もにわかカップルだらけである。どうせクリスマスからつきあいはじめて、年末年始の休日をベッタリ過ごすと年明けにはウンザリして別れてしまう年内限定の恋愛感情のくせしやがって。
 おまえら今日がキリストの聖誕祭だって理解してんのか? くやしかったら別れて三日後に復活してみろ。ひとはパンだけで生きるんじゃないだ。優しさも愛も必要なんだぞ!
 おまえらが聖地巡礼の旅に出るなら、おれは聖地奪還の十字軍遠征に出る! 右の頬を打たれたらおれが左の頬を打ってやる! 十戒には汝姦淫するなかれって書いてあるだろうが。おまえらは異教徒だ! おれが先っぽにモフモフがついた杖で全身をくすぐってやる!
 だいたいにおいてキリスト教ばっかりもてはやしやがって。4月8日の降誕会の出番はないのか? 仏教の立場はどうなるんだ! お釈迦様の螺髪は頭髪が縮んで固まったもので決してイボイボじゃないんだ! おれは浄土真宗だ!
 クリスマスなんかキライだ!