新世界より

 忘備録として記す。
 8月24日。カッとしてPC注文す。dell。inspiron620。モニタ同梱版也。なににカッとしたかは、いまとなっては知る由もない。
 9月2日。到着す。梱包されたダンボール箱のあまりのデカさに辟易す。玄関横にうっちゃる。
 9月8日。いいかげん処置に困ったため、やむなく開梱。CPUが第二世代Core i5というのは別として、各主要モジュールが貧弱であるため、パーツを換装。メディアドライブをBlu-ray対応のものにしたのをはじめ、今度のPCは64bit版windows7ということで、メモリをDDR3、4Gx2で合計8Gへ。最後に以前のPC内にあったデータのバックアップがとってある2THDDを増設。これにて準備完了。電源投入後、使用開始。
 最大の懸念材料であったwindows7も、最初こそ戸惑ったもののすぐに慣れる。むしろ、音声や動画などのメディア周りの操作性は、XPよりも快適になっている。というか、以前のPCが貧弱すぎたのだけれども。夏場の暑い盛りなんか、mp3ファイルを再生しているだけでノイズが入ったほどだから。
 9月26日。まともに音楽が聴けるというだけで嬉しい日々を過ごすなか、欲が出て、さらなる音質向上を目指す。紆余曲折を経た後、以前購入したローランド製オーディオキャプチャ、UA-4FXを導入。けっこうな音質の差にビビる。当時はDTMの録音用機材として購入したが、外付けのUSBオーディオバイスとしても使用できたことを、不覚にもはじめて知る。No music,More life.
 10月31日。音楽三昧の日々が続くなか、耳を澄ませばPCの動作音のうるささが気になりはじめる。気になれば気になるほど音は大きくなり、まるで初代Xboxだと喚いた後、どちらもマイクロソフトだったと嘆息する。
 色々と調べた結果、騒音の原因は、内部ファンの高速回転にともなってPCケースが振動することが原因と確認。ファンを低速静音設計のものに交換することで対策とする。交換するパーツは二点。CPUクーラー、サイズ製、KABUTO。ケースファン、AINEX製、Omega Typhoon 90mm究極静音モデル。
 ケースファンの取り付けは問題なく済ませたものの、一方のCPUクーラー、KABUTOで難航する。とにかく、デカイ。見た瞬間に身構えてしまうほどのデカさである。更には、形状が異様である。喩えるならば、道端の街路樹をふと見てみると、そこにバカでかいキノコが生えていたという感じの異様さである。ちょっと触りたくない気がしてきてしまうでのある。ヘンなパイプとか出てるし。
 取り付け方法が、またおそろしく高難易度である。マザーボードに開いているCPUクーラー取り付け用の穴に、プラスティック製の固定ピンを押し込む構造になっているのだが、位置的に挿し込みづらいこと、加えてマザーボードがしなるほど強く押し込まなければならない。悪戦苦闘の末、どうにか設置に成功。ほっとする以前に、あまりの取り付けづらさに無性に腹立たしい思いをする。
 電源投入後、一時起動不能に陥るトラブルに見舞われたものの、しばらく放置すると無事、復帰。おそらくは湿気か静電気が原因だと想像するが、詳細は不明也。動けばいいんだ。
 翌11月1日。ケースの振動が収まり、目に見えて静かになったPCにて音楽を聴いていると、突如として耳をつんざく高周波ノイズに七転八倒す。電源のコイル鳴きである。カッとしてすぐさまAmazonにて電源パーツをポチる。
 11月3日。ヤマト、アマゾンより来る。
 新たな電源は、玄人志向製、静音設計と安定出力を謳ったKRPW-SS600W/85+。ケース内部への取り付けを試みるも、鎮座まします偉大なるKABUTO様に暫時ご退席願わぬことには、どうにも設置ままならぬこと、相成る。やむなし。
 幾度もの艱難辛苦を乗り越え、取り付け終了。忌まわしきKABUTOもあいもかわらず我物顔で居座り続ける。
 電源投入。ケースの振動による騒音復活。CPUクーラーのファンと電源ファンが同じ12cmファンであるせいか、共振を起こして以前にも増してうるさい。もはや我慢の限界。かくなるうえは抜本的解決しか残された道はなし。カッとして、すぐさまPCケースをポチる。
 11月12日。ケース交換作業。
 最終手段として購入したるは、静音設計で定評のあるAntec製PCケースSonata Proto。いままでに交換したパーツはもちろんのこと、マザーボードごと一切合切移動させる大工事となる。
 ついでに、何度も設置解体を繰り返したことで固定用ピンがガタついてしまったKABUTOも、別売りのネジ止めキットを購入して手軽に装着できるようにしておく。つーか、そんな便利なもんあるんなら、最初から同梱しておけよ。
 わけのわからぬ電子部品が部屋中に散乱し、拷問跡か手術跡の如き惨状に慄きつつもどうにか組み立て終了。ほっとする以前に、ここまでやってまだうるさかったらどうしてくれようかと、無性に腹立たしい思いをする。
 電源投入後、一時起動不能に陥るトラブルに見舞われたものの、あれこれといじっているうちに、無事、復帰。おそらくはHDDの接触不良と思われるも、詳細不明也。ただひとつわかっていることは、KABUTOをいじるたびにトラブルが勃発する。おのれ。
 11月20日。今日も今日とてPCは歌い続ける。
 初音ミクは電子のソプラノを響かせ、平沢進は電子の雄叫びを谺させる。
 私は静かに、耳を澄ませる。