つながるキミとボク。

 携帯電話を買いかえたのであります。いわゆる機種変更というやつですな。
 日常生活を営んでいくうえで僕がどうしても好きになれないものがふたつありまして、それがテレビと携帯電話であります。理由はどちらもうるさいから。
 ただ単にやかましいというだけならば、人の話し声も、車の走りまわる音も、右翼の街宣カーも大学堂もおしなべて騒音公害であるわけですが、なかでもテレビと携帯電話はたちが悪いと思ってしまったりするんであります。
 わたくしがテレビをことのほか敵視する理由は、密室空間のなかにあって室内にいる人間の注意力をいやおうなく引きつけるように作られているからであります。わたくし、テレビがついているともはやなにも手につきません。今晩中に読み終わりたい本も、提出期限が迫ったレポートも、〆切間際の原稿もなにもかも放りだしてテレビのブラウン管に食い入ってしまいます。テレビは害毒であります。『酒と家庭は読書の敵だ。』なんてタイトルの本がありましたが、テレビはもはや我が人生の敵です。テレビ好きだなんて連中は、ブラウン管から放射される放射能でみんなEDになってしまえばいいんだ。アメリカ人にハゲが多い理由は、まちがいなくテレビの見過ぎですね。あれは放射能障害ですよ。バサバサ抜け落ちる。
 放射能と勃起不全で連想してしまいましたが、第二次大戦中、日本で放射能を研究していた科学者のなかには、精力増強のためだといって股間放射能をあてたりしていたお方などもあったそうです。すごいですね。その発想だけでも絶倫になれそうな気がします。戦後はどうなされたのでしょう。
 ひるがえって携帯電話ですが、これはもういきなりかかってきて安息の静寂をかき乱す、これにつきます。まったく、いつ鳴りだすかと思うと怖くて怖くて、わたくし、とてもじゃないが電話を携帯することなどできません。とはいってもそこは俗世間をよすがとする悲しき身の上。今の世のなか、携帯電話のひとつも持たねば満足に仕事もできぬ有様です。
 以前使用していた携帯電話は日に50通は下らないスパムメールに音をあげてついにご臨終あそばされたわけですが、今回、機種変更すると同時に登録したアドレス以外一切メールを受信しないようにいたしましたところ、それ以来一週間、わたくしの携帯電話はまったく鳴らなくなった次第でございます。
 だれでもいいんです、電話ください。