「SFの確かな野党国書刊行会」

 今月のはじめより書店に並んでいる『SF本の雑誌』(本の雑誌社)を読む。
 なんともストレートなタイトルだと思ったら、「別冊本の雑誌」シリーズであった。『新恋愛小説読本』以来? 本誌からの転載も多めだし、個人的には『本の雑誌SF読本』なんて角張ったタイトルの方が好きなんだけど、書名のフォントがかわいいからこれでいいのだ。背表紙が素敵である。ちなみに、表紙カバーをはずすとおそろしくハイセンスな本文表紙があらわれ、驚く。奥付を見て納得。岩郷重力+WONDER WORKZ。の手による装幀であった。書店の店頭でも同様の感想を持った人がいたのか、思いっきり見知らぬ指紋がついていました。
 そういえば、本の雑誌の公式サイト上で連載されている「帰ってきた炎の営業日誌」によると、この本の企画を出したのは炎の営業部長こと、杉江さんらしい。いつのまにSFにまで手を染めたのだろうか。私がいた頃、ふたりしてハードボイルドミステリってかっこいいよななんてことを話題にして、杉江さんからは原りょうを勧められ、私はサム・リーヴズの『長く冷たい秋』を勧めたような記憶がある。逆かもしれんけど。
 それにしても、なんとも人を食った本である。冒頭、涼宮ハルヒからホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』までが乱れ飛ぶオールタイムベスト100からはじまって、とり・みきの「SF大将 特別編」、大森望北上次郎による「読むのが怖い!」対談の出張版まで、とにかく面白く読ませて、なおかつ読み終わったときに“SF”が読みたい! と思わせる。ただのブックガイドには興味がありませんと言い切ってやまない、正しく本の雑誌的なSFガイドである。


SF本の雑誌 (別冊本の雑誌 15)

SF本の雑誌 (別冊本の雑誌 15)