われら青春! ふれあい。

 ここ数日、どうも寝覚めが悪いと首をかしげていたのが、洗濯しようと枕カバーをはずしたところ、中綿がはみ出て全体がぶよぶよになっていることに気づく。原因はこれである。
 私はこう見えても枕にはうるさい。江戸川乱歩が、うつし世は夢、夜の夢こそ真と謳ったように、安眠のなかにこそ幸福があるのである。八代亜紀が、酒はぬるめの燗がいい、肴はあぶったイカでいいと唄ったように、枕は高めの方がいい、ほどよく堅めの方がいいのである。
 しょうがないので、新しく枕を購入することに決め、どうせならでかい店に行った方が種類もたくさんあるだろうと、「百貨店をのぞくと都内最大の商業施設」と雄叫びをあげているイトーヨーカドーArio亀有店まで足を伸ばすことにする。ついでにたけしがメシを食いに出かけるつもりだと言っていたので、お誘いの声をかける。
 自宅を出てぶらぶらと15分ほど歩き、目的地到着。でかい、たしかにでかい。さすがに万里の長城ほどでかくはないが、秋葉原のヨドバシ並にでかい。
「見つかる、ここならば見つかるのだ、枕が!」
「食える、食えるのだ、メシが!」
 なぜか興奮するふたり。
 入店後、オープンテラス式の飲食コーナーにてオーダーした丼をかきこんだのち、枕を探して寝具売り場へ。これはどうだ。ちょっとやわらかいな、頭が沈みこむ。じゃあこっち。堅すぎる、後頭部が絶壁になってしまう。ふたりしてあーでもないこーでもないと枕談義に花を咲かせる。ひとつだけ、お互いにひと目見たとたん、これは素晴らしいと意見が一致した枕があったのだが、お値段を見るとなんと15,000円もする。たぶん、ふたりが身につけている衣服全部あわせても、そんな値段はしない。さすがに断念。
 30分ほどかけて気に入ったものを選びだし、購入。疲れたので、一階のベンチで休憩。近くで売っていたソフトクリームがあまりにおいしそうだったので、一個ずつ食べる。
 夜、新しい枕にて就寝。なんとなく幸せな気分でまどろみながら、今日一日の出来事を反芻する。ふたりそろっておでかけ。オープンテラスで向かいあってお食事。眠る枕を一緒に選ぶ。ベンチに座ってアイスクリーム。………男同士で。