心せわしきこの世のなか、傾いてごらんにいれましょう。(其の一)

 もういつのことだったかも忘れてしまったが、あのときプレイステーション2を購入した目的は当時発売されたばかりの『ワンダと巨像』というゲームを遊びたかったからだったんである。『ico』をこよなく愛する私としては、これをプレイせねば『MOTHER3』も東方の新作も未来永劫訪れることはないってくらい力瘤もりもりで本体と同時購入したのだが、いまもってやってない(ちなみに我が家のPS2は三代目)。本体にセットしたこともない。封すらあけてない。そもそもPS2自体、先日まで引き出しの奥深く放置されていたていたらくである。これまでに電源を入れたのはたった一度。それもゲームして遊んだわけではなく、ちゃんと動くかどうかと起動を確認した一度きりである。そんなことをしているうちに、『ワンダと巨像』はPS2Bestとか銘打って廉価版が発売されてしまった。いったいなんのためにけっこうな金を払ってまで買ったのか。あのときプレステ2を買ったおかげでどれほど年末苦労したことか。本当に年を越せるのかと不安にさいなまれ、若ハゲの恐怖におののいたことか。
 まあ、そんなことはどうでもいいのだ。過ぎたるは及ばざるがごとしってやつで、『ワンダと巨像』もそのうちやる日がくるでしょう。なんか面白いって評判らしいし。
 そんなわけで長いこと無聊を囲っておられたPS2だが、ここにきて積年の恨みを晴らすがごとく猛烈な勢いで連続稼働中である。電源を入れるやいなや戦場を駆けめぐり、あらゆる力学的法則を無視した身体能力で視界を埋め尽くす有象無象をばったばったと斬り払う。ときに伊達政宗は暴走族の総代もかくやと怪しげな異国語を連呼し、かたや悲運の智将だったはずの真田幸村は中国の京劇のようなド派手な衣装を着てバカ丸出しで武田信玄への愛を叫ぶ。第六天魔王こと織田信長はいつもどおりとしても、その妻濃姫ジョン・ウーばりに二丁拳銃をぶっ放し、家康麾下にあって蜻蛉斬りを振るった剛将本田平八郎忠勝にいたってはもはや人ですらない。電源入れて起動する戦闘ロボットである。
 そうです、鏖殺の雄叫びをあげ戦いの犬を野にはなてってわけで『戦国BASARA』です。いま、我が家のPS2のなかでは16人の婆娑羅者たちが虐殺の愉悦に浸っております。どこからか「あー、あの三国○双もどきね」などという心ない声があがりそうですが、そんなゲームは知りません。『団地妻は電気ウナギの夢を見るか』なら知っていますが。
 このゲーム、もともとうすらバカけんじ(うまづら)がおすすめだからやってみろともちかけてきたんですが、通常、けんじの提案はすべて却下ということになっているので、そのときもそんなもんは知らん! と力強く突っぱねたわけです。その後、ひょんなことからゲーム画面を見る機会がありまして、なんとなく面白そうだなと。強調しておきたいのは、決してけんじのおすすめだからやってみたわけではないということです。あくまでゲームそのものが面白そうだったから手に入れたんであります。悔しいからけんじにはハマっていることは伝えてありませんけど。

戦国BASARA(カプコレ)

戦国BASARA(カプコレ)